Robinson's cherry 24



















 石門の脇には、すぐ店が長く連なっていた。
 隣街のリンチュエイの繁栄に大きく貢献している街、グランシー街。
 古くからリンチュエイと共にあるこの街は、織物の街として有名だ。グランシー街の織物は波や風を模様化した柄が特徴的で、品質としても上等な物だ。街の心性種の多くは港町のリンチュエイから仕入れてくる麻や絹の糸で様々な模様の施された布を織り、雄性種は舟で出て漁業に出ていったり、織られた布を他の街や村に売りに行ったりして生計を立てている。
 この星の住人は太陽が上がると自然と起き出してくるので、今の時間はもう街は起きて機能を開始している。グランシー街も例外ではなく、門のそばに立っている石製の大きな振り子時計で見るとまだ八時前なのにテントの張ってある店は、すでに客と店番のやりとりで騒がしく賑わっていた。
 街の大半が橋で繋がれた百五十三の小島で街の面積が広い割には、人口は隣のリンチュエイと同じほどしかない。連なる百五十三の島には大抵五軒から十軒の家や店が建っていて、桟橋がついていることが多い。木舟には櫂や籠が入れたままで、常に使われているらしい。
 街の陸の部分はほとんどが店で、住居はちらほらとしか見られない。周りを見渡して、特に織物を扱う店が多いのを見て察すると、ウォートはふらふらとまるで吸い寄せられるように一軒の店の前に立った。
 細い細い糸で織られた布は機械で織られたより遙かに繊細で美しく、着色されたのか元来の色なのか、薄い透けた青を陽光に反射させて光を弾いていた。幅や長さから見て、どうやらショールらしい。
「買ってってよ、お客さん。きれいだろう?」
 巻いて裾の方だけを出していた布を広げてひらひらと揺らした。
 繊維の一筋一筋が輝いて知らず目を細めながら手に取ると、指先をさらりと布地が優しく撫でた。
「恋人にさ、おみやげとか。旅人だろう、お客さん。何処に行くんだい?」
「捜し人をしてるんです。金髪の…このくらいの髪の子知らないかな」
 手で腰の上あたりを指すと、実年齢の知れないユウビョウ族の心性種は、ゆらゆらと背後で長い尻尾をくねらせた。どうやら、ウォートよりは遙かに年上のようだ。
「なに族だい?」
「ジンギョ族で、足首のあたりに皮膚の引き連れがあるらしいんだ」
「ジンギョ族ねえ……大、ねえ大」
「んだよ」
 店の奥で釣り竿を弄くっていた雄性種が顔をあげた。陽に灼けて精悍な顔がウォートを見つけて、ああ客か、と呟く。
「金髪のジンギョ族を捜してるんだってさ。知らない?」
「ジンギョ族の金髪ね…ああお客さん、二島目に鍛冶屋がある。そこの鍛冶師に聞いたらいい」
「二島目の鍛冶屋」
 ウォートが鸚鵡返しに言うと、大と呼ばれた織物屋の雄性種は頷いた。
「やつなら多分知ってるだろうさ。情報通だ」
「わかりました。ありがとうございます」
 言ってウォートは手を振って去ろうとしたが、ふと思って店に戻った。
 青い布を手にとる。
「これ、下さい」
「お礼でならいいよ」
 店番の心性種はそんなら買わないでと手を振ったが、ウォートは背に背負った麻袋から金をいれた袋を出した。
 中に入った陶器製の陶貨が乾いた音を立てた。
「…恋人に」
「ならいいよ。そうだね、500リンで。袋はどうする?」
「ありがとう、いいです。これに入れてくれますか」
 500リンを払って麻袋の口を開けると、多分この布を織った細い手が丁寧にショールをたたんで袋の中におさめた。
 もし逢えなかったとしても、雫にでもあげればいい。逢えたなら、どんな言葉を言われようとどんな結末になろうとも、お守りのお礼にと渡したい。
 小さくこころの中で言い訳を作りながら袋を背負うと、ウォートは言われたとおり、二島目を目指して街を突っ切った。
 街は商人と漁師と機織りをする心性種で溢れている。波の音にまじって威勢のいい声と陶貨が袋の中で合わさる音、テンポのいい機織りのリズムがまるで音楽のようだ。
 きょろきょろと周りを見渡しながら馬は売っていないだろうかと探してみたが、どこにも馬を扱う店はなくて、街の人間に訊くと、リンチュエイに行かなければ馬は売っていないとのことだった。
 百五十三島がどのくらいの距離あるのかはわからないが、やはり馬を買ってからリンチュエイを出て来るんだったと後悔したが、今では遅い閃きに過ぎなかった。










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